2014年5月9日金曜日

時には或る世界の話を vol.1

街外れの丘にある古い天文台には

麓の校から天文部の学生が夜毎訪れる


大きな望遠鏡と観測装置の側をすり抜け

鉄製の螺旋階段を上階へ上がり

白く光る石造りの扉を抜ければ

そこには此処へ来る天文学生のため望遠鏡が数台並べられている


学校指定と思しき、揃いの紺色をした上着のポケットから

掌ほどの大きさの鉱石を取り出すと、

望遠鏡の見に取り付けた台に載せる

そして、望遠鏡で蒼空の星を辿り

星と、小さな台に載せた鉱石とを鏡筒で繋ぐように設置した

そして、鞄から取り出したノートへ

光と鉱石の状態を記してゆく


光を吸い込んで、星を映して

鉱石は星霰鉱へと姿を変えるのだ


彼らは、星霰鉱を作る研究をしている

星霰鉱はこの国の特産である

乱立した水晶型テラリウムで光を集め

その下で様々な鉱石から育てるのである

白く脆い石は生活に関わるあらゆる物へ

淡く光る石は技術的な分野に関わる物へ

元の鉱石で性質変化する星霰鉱の研究は

発見から幾星霜、未だ続けられている


 

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